私の最初の電話

音ゲ等長文語りしていこう

2023年6月12日の日記

 私は大学で機械工学系の学部に入りましたが、入ってすぐの基礎的な講義でかなり苦戦しました。そんなことをふと思い出したので、今後、学部2年になりたての頃の私自身を相手にするという想定で、力学の入門の内容を解説する記事をいくつか書いていく……かもしれません。めんどくさくなったら自然に更新されなくなると思います。過去の私自身がわかればいいという気持ちで文章を書くので、他人から見ると笑っちゃうくらいわかりづらいかもしれません。ちなみに数式をLaTeX表記にするのが面倒なので、見づらいとは思いますがとりあえず通常文面(?)で数式も書いてしまいます。行列とか出てくることになったらLaTeXにせざるを得なくなると思うので、いずれは記事公開後の加筆修正によってLaTeX表記に修正します。

 そして、この記事は私が個人的に書いているものであって、内容が全然間違ってる可能性があることに気を付けてください

点の位置の表現

 まず、点の位置の表現についての話をしましょう。点の位置を表現するのには、以下の2つの方法がよく使われます。1つ目は、座標系、すなわち3つの実数の組を入れると点の位置を返すような写像(あまりにも歪な写像は工学では考えませんので、却下です。欲しくなる程度の滑らかさは前提と思ってください。)を作っておき、3つの実数の組(座標という)で点の位置を表現する方法です。2つ目は、原点と呼ばれる1点O(のみ)を決めておいて、Oから注目する点へのベクトル(位置ベクトルという)として点の位置を表現する方法です。位置ベクトルを用いて点の位置を表現する際、例えば→OP(「OP」の上に矢印を書きたい)と書けばPの位置ベクトルということにはなりますが、これだけでは具体的な位置がわからず、工学的に困ることがあります。そのときは、数学のベクトル空間についての講義で習ったように一次独立な3つのベクトルをあらかじめ用意しておき、(3次元ベクトル空間の元であって一次独立な3つのベクトルは基底ベクトルとなることに留意して)それらを基底ベクトルとしてそれらの線形結合で→OPを表せば、工学的にも具体的な位置がわかり、問題が解決します。ちょっとわかりづらかったかもしれませんが、要するに→OP=xe_x+ye_y+ze_zみたいに書くということです。

 教科書や講義はあまり重視してくれないがちなことですが、ここまでで述べた、座標による表現と位置ベクトルによる表現という2つの異なる方法があるということを認識することが重要です。直線座標系の場合は話が単純で、それゆえ2つの方法の違いを意識することは少ないです。直線座標系をとっていると、基底ベクトルを極めて自然にとることができます。すなわち、x方向に大きさ1のベクトルe_x、y方向とz方向についても同様にしたベクトルe_y、e_zの3つです。位置ベクトルの原点も自然のなりゆきにまかせて座標系の原点と同じにとれば、座標による表現が(x, y, z)の点Pについて、その位置ベクトルは普通に→OP=xe_x+ye_y+ze_zとなります。ところが直線座標系でない座標系をとるとこうはいきません。まず基底ベクトルをどうとるかというのがあまり明らかではありませんが、注目する点Pの位置によって基底ベクトルを変えていいという視点を持てば、点Pの位置において「座標の第1成分のみが増える向き」(例えば球座標系でいえば半径方向、詳しくはまたいずれ解説します)に大きさ1のベクトルe_1、第2成分と第3成分についても同様にしたベクトルe_2、e_3をとるのがまあまあ自然だと思います。ところがそのように基底ベクトルをとったとしても、直線座標系のときのように位置ベクトルがわかりやすい形で与えられるとは限りません。例えば球座標系を用いたとき、座標による表現が(r, θ, φ)の点Pに対し、上記のように基底ベクトルe_r、e_θ、e_φをとったとしても、θ=φ=0でない限り→OP≠re_r+θe_θ+φe_φです。ちなみに、r、θ、φによらず→OP=re_rとなります。直線座標系のときとは違っていてすこし奇妙ですね。

 どうでしょう。ここまでで、君(学部2年初めの私)が大いに疑問を持っていることのひとつがよく解決されたと思います。ここまで話したことは、私は結構大事なことだと思うんですけど、誰も教えてくれなかったでしょう。ところで君(学部2年初めの私)はここまでの話に対し、(「座標の第1成分のみが増える向き」以外)あまり「何故?」と問うことはなく自然に受け入れてくれると思いますが、ニヤニヤしながら「ベクトルってなんですか?」と聞いてくるかもしれません。そう、ベクトル、というかベクトル空間には代数的で抽象的な定義が存在し、君はそれにいたく感動したのでした。注目する集合に対し、ある体があって、ある「和」と「スカラー倍」の写像が定義できるとき、その集合と体と写像をセットにしてベクトル空間というのでした。工学においてベクトルといえば例の「大きさと向きを持つ量」と見るか、あるいは基底ベクトルの取り換えに対しある規則(なんでもいいので規則と呼べるものがあればいいという意味ではない)に従って変化する3つの量と見ることが多いのですが(後者になじみがないと思いますが、今後「テンソル」という概念を取り扱うときに重要になる考え方なので、詳しくはまたいずれ解説します)、数学における抽象的なベクトルの概念とそれに関する定理をかなり適用できるため、まあどっちの意識も持ちつつ先に進んでいけばいいと思います。君/私は、高校卒業の頃あたりからこういう「どっちの考えも大事」という思想を持っているでしょう/持っています。その思想は今になってもやっぱり大事だったと常々思います。

 ここまでで文章がそこそこの長さになったので今回の記事はここまでにしておきます。次があれば、座標変換の話か、速度・加速度の話になるかと思います。